韓国環境省(Ministry of Environment, MoE)は、2025年8月7日より、化学物質の登録及び評価等に関する法律(K-REACH)の施行規則の改正(環境部令第1183号)を施行しました。今回の改正は、国際的な化学物質安全基準の変化に対応し、化学物質管理の一層の強化を目的としており、「有害性が未確認の物質」の規制要件の明確化、新規化学物質届出の適正性審査プロセスの高度化、透明性向上及び安全性情報公開の拡大など、重要な変更点を含んでいます。
<主要な改正ポイント>
(1)「有害性が未確認の物質(Substances with Unconfirmed Hazards)」の要件の明確化
今回の改正で「有害性が未確認の物質(Substances with Unconfirmed Hazards)」という重要な概念が新たに導入されました。該当する物質は、以下のいずれかの毒性データが確認されていない物質と定義されます。
• 急性経口毒性または急性吸入毒性(物質の状態や用途に応じて適用)
• 細菌を用いる復帰突然変異試験(Ames試験)または哺乳動物細胞を用いる染色体異常試験
• 急性魚類毒性、急性ミジンコ毒性、淡水藻類生長阻害試験のいずれも確認されていないもの
• 生分解性が確認されていないもの
ただし、以下の物質は「有害性が未確認の物質」の対象外となります。
• ポリマー
• 水溶解度が1 mg/L未満の物質
• 中間体または工程調整剤としてのみ使用される物質
• 猶予期間内に登録されなかった既存化学物質
2025年8月7日以降、新規化学物質の届出申請時には、事業者は自社の保有データや確認したデータ(試験データ、非試験データ)に基づき、物質が「有害性が未確認の物質」に該当するか否かを確認し、申告することが義務付けられます。
(2)新規化学物質届出データの適正性審査方法の高度化
新規化学物質の届出データについて、韓国環境公団(Korea Environment Corporation, KECO)は、分類表示の適正性を検証するため、以下の審査プロセスを実施します。
1. 追加データの存在有無の確認 → 存在する場合は、その信頼性を評価します。
2. 信頼性が認められた追加データ → 提出データと同等以上のデータであるかを判定します。
3. 信頼性が提出データと同等以上の場合 → 両データセット間の分類表示の同一性を判定します。
上記の審査で分類表示の適正性の判断が難しい場合、国際的に認められているQSAR(Quantitative Structure–Activity Relationship: 定量的構造活性相関)プログラムや、構造・物性が類似する化学物質のデータを参照して審査します。
適正性審査の結果、化学物質の物性または有害性に関する新たな情報が確認され、かつ危害分類に変更が生じる場合、韓国環境公団(KECO)は届出者に対し、「届出内容変更」の提出を推奨することができます。
(3)新規化学物質届出の審査期間の延長
韓国環境公団(KECO)による新規化学物質の届出の審査期間が、これまでの7日間(詳細審査時は最大14日間)から、14日間(詳細審査時は最大28日間)に変わりました。これにより、事業者は事業計画に余裕を持たせる必要があります。
(4)「有害性が未確認の物質」の情報開示義務の強化
「有害性が未確認の物質」が、たとえ有害性に分類されない(附属書7非該当)場合でも、混合物中に一定濃度以上含有される場合、化学物質安全情報(Chemical Safety Information)の中でその情報を開示することが義務付けられます。この情報を営業秘密として非開示にするには、韓国環境部(MoE)の承認が必要となります。
含有量が閾値未満の場合、分類表示や安全取扱い情報などの詳細な開示義務が一部免除される特例もあります。
(5)情報公開の拡大と訂正手続きの整備
登録、予備登録、届出、有害性審査、リスク評価が完了した化学物質について、化学物質名、CAS番号、用途分類、分類表示、危害概要などの情報がウェブサイト等で公開されるようになります(下表参照)。
さらに、公開された情報に誤りや不足がある場合、より信頼性の高いデータや新たな有害性分類に関するデータを根拠として、NIER、NICS、またはKECOに訂正を要求する手続きが規定されました。