ISO14001の環境側面とは?環境影響との違いや評価手順をわかりやすく解説
ISOの環境側面という用語が理解できず、審査に向けた準備が進まなくて困っていませんか。新たにISO14001の担当者に任命された方に向けて、この記事では環境側面の意味や洗い出しの手順をわかりやすく解説します。読み終わると、自社の環境側面を正しく特定し、著しい環境側面の評価から目標設定までをスムーズに進めることができるようになります。
ISO14001における環境側面とは
ISO14001の環境マネジメントシステムを構築するうえで、環境側面の理解は非常に重要です。まずは、規格における定義や基本となる概念について詳しく見ていきましょう。専門用語を少しずつ噛み砕きながら解説していくので、焦らずに確認してみてください。
環境側面の定義と基本概念
環境側面とは、環境と相互に作用する、または相互に作用する可能性のある、組織の活動・製品・サービスの要素のことを指します。日本産業標準調査会(JISC)の審議を経て制定されたJISQ14001(ISO14001)においても、同様に定義されています。
言い換えると、自社の日常的な業務が環境に変化をもたらすきっかけや原因のことです。たとえば、工場で機械を動かすために電力を使用することや、事務作業でコピー用紙を消費することなどが環境側面に該当します。このように、日々の業務の中に潜むあらゆる行動が環境側面に当てはまると考えられます。
ISO14001を取得して運用するためには、自社のどのような活動が環境に関わっているのかを漏れなく見つけ出す必要があります。この作業を環境側面の洗い出しと呼び、環境マネジメントを機能させるための最初のステップとして重視されています。
参考:JISQ14001:2015環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引
環境側面と環境影響の明確な違い
環境側面とセットで使われる言葉に、環境影響というものがあります。両者の違いを一言で説明すると、環境側面が原因であり、環境影響はその結果です。この二つの関係性を正しく理解することが、スムーズなシステム運用のカギとなります。
たとえば、営業活動でガソリン車を使用するという行為が環境側面に該当します。そして、その活動によって二酸化炭素が大気中に排出され、地球温暖化を促進してしまうことが環境影響に当たります。原因となる活動を管理することで、結果としての環境負荷をコントロールするというのがISO14001の基本的な考え方です。
ここで、環境側面と環境影響の関係性をわかりやすく整理した表を紹介します。
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原因(環境側面) |
結果(環境影響) |
|---|---|
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工場設備での電力使用 |
資源の枯渇や地球温暖化の進行 |
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業務でのコピー用紙の使用 |
森林資源の減少や廃棄物の増加 |
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製造工程での化学物質の利用 |
大気汚染や水質汚濁の発生 |
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配送トラックでの燃料消費 |
排気ガスによる大気汚染の進行 |
このように対比させることで、自社の活動がどのような結果を招くのかが明確になります。原因と結果のつながりを意識しながら日々の業務を見直すことが大切です。
有害な環境側面と有益な環境側面について
環境と聞くと、汚染や資源の無駄遣いといった悪いイメージを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、環境側面には環境に対して悪い影響を与えるものだけでなく、良い影響を与えるものも存在します。これらはそれぞれ、有害な環境側面と有益な環境側面と呼ばれています。
有害な環境側面とは、先ほどから例に挙げているような、廃棄物の排出やエネルギーの大量消費など、環境に負担をかける要素のことです。企業としては、これらの有害な側面をいかに減らしていくかが問われます。
一方で有益な環境側面とは、環境を保護したり改善したりする要素を指します。たとえば、地域の清掃活動に参加することや、リサイクルしやすい製品を開発することなどが該当します。近年では、有害な側面を減らすだけでなく、有益な側面を積極的に伸ばしていく姿勢が企業に求められています。
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有益な環境側面が企業に与えるメリット
有益な環境側面とは、自社の事業活動を通じて環境にプラスの変化をもたらす要素のことです。近年は、この有益な環境側面を戦略的に特定・活用することが、企業の競争力と持続可能性を高める鍵として注目されています。
以下では、有益な環境側面を活かすことで企業が得られる主なメリットを詳しく解説します。
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メリットの種類 |
具体的な内容 |
主な対象部門 |
|---|---|---|
|
コスト削減 |
省エネ設備導入・廃棄物処理費の削減・原材料ロスの低減 |
製造・設備管理 |
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業務効率化 |
ペーパーレス化・工程改善(製造現場での不良率低減を含む) |
製造・全部門 |
|
企業イメージ向上 |
ESG投資家・消費者・取引先からの信頼獲得 |
営業・広報 |
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持続的改善の加速 |
社員の改善提案活性化・新技術の導入促進 |
全社員・現場 |
コスト削減と業務効率化につながる
有益な環境側面を特定することで、まず実感しやすいのがコストの削減です。たとえば、使用電力の見直しによるLED照明への切り替えは年間の電気代の圧縮につながりやすく、廃棄物のリサイクル率向上によって産業廃棄物の処理費を削減できる場合もあります。
製造現場では、不良率の低減が廃棄物の削減と原材料消費量の抑制に直結します。品質向上という本来の業務目標と環境改善の目標が同時に達成できる典型例であり、現場改善の取り組みがそのまま有益な環境側面として位置づけられる点も実務上の強みです。また、省エネ設備への更新や生産リードタイムの短縮といった業務改善も、CO₂排出量削減と経費削減を同時に達成する有益な環境側面として位置づけられます。
企業イメージの向上と社会的信頼の獲得
有益な環境側面への取り組みは、社外からの評価にも直接影響します。近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大を背景に、環境配慮の姿勢は投資家が企業を評価する重要な指標のひとつとして注目されています。環境にプラスの影響をもたらす活動を体系的に管理・発信することで、投資家だけでなく消費者や取引先からの信頼を高めることができます。
また、環境配慮型製品の販売促進や再生可能エネルギーの活用といった取り組みは、企業ブランドを差別化するうえでも有効です。サプライチェーン全体での環境貢献が求められる現代において、有益な環境側面を明確に示せる企業は、新規取引先の開拓においても優位に立ちやすくなります。
社員意識の向上と継続的改善の促進
有益な環境側面を組織全体で認識し、EMSの運用に組み込むことで、社員一人ひとりの環境意識が高まります。「自社の活動が環境にどのようなプラスをもたらしているか」を具体的に理解できると、現場からの改善提案が活性化しやすくなります。
これは単なるモチベーション向上に留まらず、組織の環境パフォーマンスを継続的に底上げする仕組みへとつながります。有益な環境側面は改善活動の起点となるため、EMSをマンネリ化させずに「攻めの環境経営」へと進化させる原動力となり得ます。社員が環境改善の主体として関わることで、組織全体の持続可能性を高めていくことが期待できます。
環境側面の具体的な洗い出し手順
環境側面という言葉の意味が理解できたところで、次は実際に社内の環境側面を見つけ出す作業に入ります。ここからは、業務プロセスを整理して環境側面を漏れなく抽出するための具体的な手順を解説していきます。
対象となる業務プロセスの特定方法
環境側面を洗い出すためには、まず自社がどのような業務を行っているのかを全体的に把握する必要があります。すべての活動を対象にするため、製造部門だけでなく、営業や総務などの間接部門も含まれる点に注意してください。
各部署の業務を細かく分解し、どのような工程があるのかをリストアップしていきます。たとえば製造部門であれば、材料の仕入れから加工、組み立て、検査、出荷までの流れを一つずつ確認します。営業部門であれば、顧客訪問や提案書の作成、事務部門であれば書類の印刷やオフィス内の空調管理などが対象です。
このとき、日常的な業務だけでなく、年に数回しか行わない設備メンテナンスや、緊急時に発生する可能性のある事故の対応手順なども含めることが推奨されます。見落としを防ぐためにも、各部門の現場担当者からヒアリングを行いながらプロセスを特定していくと良いでしょう。
インプットとアウトプットからの抽出方法
業務プロセスを特定したら、それぞれの工程において何が使われ、何が生み出されているのかを分析します。これをインプットとアウトプットの観点から抽出すると呼びます。この手法を用いることで、環境側面を漏れなく発見しやすくなります。
インプットとは、その業務を行うために投入される資源やエネルギーのことです。電力、水道水、原材料、コピー用紙などが該当します。一方のアウトプットとは、業務の結果として排出されるもののことです。製品そのものだけでなく、廃棄物、排気ガス、排水、騒音などもアウトプットに含まれます。
各部門のインプットとアウトプットを整理するための例を表にまとめましたので、参考にしてください。
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対象となる部門 |
インプット(投入するもの) |
アウトプット(排出するもの) |
|---|---|---|
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製造部門 |
原材料、電力、水道水、化学薬品 |
製品、産業廃棄物、工場排水、騒音 |
|
営業部門 |
ガソリン、印刷用紙、パンフレット |
排気ガス、一般ごみ、古紙 |
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事務部門 |
電力、コピー用紙、文房具 |
シュレッダーくず、使用済みトナー |
このように整理していくと、どの工程で環境への影響が発生しているのかが一目でわかるようになります。洗い出されたインプットとアウトプットの項目が、そのまま管理すべき環境側面としてリスト化されていきます。
洗い出しに役立つ環境側面評価シートの活用
全社的に環境側面を洗い出す際、口頭やメモだけで進めると情報が散逸してしまう恐れがあります。そこで多くの企業では、環境側面評価シートという共通のフォーマットを活用して情報を集約しています。
環境側面評価シートには、業務の名称、具体的な活動内容、インプットとアウトプットの項目、そしてそれらがもたらす環境影響を記入する欄を設けます。部署ごとにこのシートを配布して記入してもらうことで、会社全体の環境側面を統一された基準でまとめることができます。
シートを作成する際は、現場の担当者が迷わずに記入できるよう、記入例をいくつか記載しておくことが効果的です。また、集められたシートを環境管理の責任者が確認し、表現のブレや漏れがないかをチェックすることで、より精度の高い環境側面のリストが完成します。
参考:環境側面の調査と環境影響評価/大阪府(おおさかふ)ホームページ
環境側面の洗い出し手順を把握したら、次は実際の認証取得に向けて動き出しましょう。SAIグローバルジャパンでは、ISO14001を含む複数の規格に対応した審査・認証サービスを提供しています。調査票の記入からお見積り、認証書の受理まで、段階的なフローで審査を進めることが可能です。
著しい環境側面とは何か
環境側面をすべて洗い出すと、その数は膨大なものになります。しかし、限られた人員と予算の中で、すべての項目に対して同じように改善活動を行うのは現実的ではありません。そこで重要になるのが、著しい環境側面という考え方です。
著しい環境側面の意味と重要性
著しい環境側面とは、洗い出した多数の環境側面の中で、環境に対して特に大きな影響を与えると判断された項目のことです。ISO14001では、この著しい環境側面を特定し、優先的に管理や改善を行うことが求められています。
たとえば、コピー用紙を数枚無駄にしてしまうことと、有害な化学物質を大量に含んだ排水を流してしまうこととでは、環境へ与えるダメージの大きさがまったく違います。企業として本当に取り組むべき課題にリソースを集中させるため、この絞り込みのプロセスが必要となります。
著しい環境側面として特定された項目は、のちに設定する環境目的や環境目標と深く連動することになります。そのため、どの項目を著しいと判断するかは、企業の環境マネジメントの方向性を決める非常に重要なステップと言えます。
著しい環境側面を決定するための評価基準
著しい環境側面を決定するためには、客観的で納得感のある評価基準をあらかじめ定めておく必要があります。担当者の感覚だけで決めてしまうと、監査の際に根拠を説明できなくなってしまうからです。
評価基準としてよく用いられるのは、発生する頻度や影響の規模、そして法令による規制の厳しさなどです。毎日大量に発生するものは頻度が高く、一度の事故で周辺地域に甚大な被害を及ぼすものは影響の規模が大きいと判断されます。
また、社会的な関心の高さも考慮するべきポイントです。近隣住民からの苦情が発生しやすい騒音や悪臭、または世間的に削減が強く求められている温室効果ガスの排出などは、優先して管理すべき項目として評価される傾向にあります。
評価点算定法を用いた具体的な決定手順
多くの企業で採用されている客観的な評価方法の一つに、評価点算定法というものがあります。これは、あらかじめ設定した複数の評価基準に対して点数をつけ、その合計点によって著しい環境側面を決定する手法です。
たとえば、発生頻度、影響の規模、法令規制の有無といった項目ごとに1点から5点までの点数を割り当てます。すべての環境側面に対してこの採点を行い、合計点が一定の基準を超えたものを著しい環境側面として特定するという流れです。
ここで、評価点算定法に用いられる一般的な評価項目の例を表で紹介します。
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評価の項目 |
点数付けの目安 |
|---|---|
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発生の頻度 |
毎日発生する(高得点)〜年に数回しか発生しない(低得点) |
|
影響の規模 |
広範囲に影響を及ぼす(高得点)〜社内のみに留まる(低得点) |
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法規制の有無 |
厳しい法規制がある(高得点)〜特に規制は存在しない(低得点) |
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社会的な関心度 |
近隣クレームの恐れがある(高得点)〜関心は低い(低得点) |
このような点数化の仕組みを取り入れることで、誰が評価しても結果がブレにくくなります。また、審査員に対しても、なぜこの項目を著しい環境側面として選んだのかを論理的に説明できるようになります。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- 環境側面は企業の活動が環境に変化をもたらす原因を指し、環境影響はその結果を意味する
- 環境側面の洗い出しは、業務プロセスのインプットとアウトプットを整理して進める
- 影響の大きなものを著しい環境側面として特定し、評価点算定法などを活用して客観的に決定する
環境側面を正しく理解し、客観的な基準で評価することは、効果的な環境マネジメントシステムを構築するための確実な第一歩となります。自社の活動が環境に与える影響をしっかりと見つめ直し、前向きな改善活動につなげていきましょう。
ISO14001の環境側面を正しく把握できたら、次は認証取得に向けて動き出しましょう。SAIグローバルジャパンでは、ISO14001を含む複数の規格に対応した審査・認証サービスを提供しています。調査票の記入からお見積り、認証書の受理まで、段階的なフローで審査を進めることが可能です。


