食品製造における根本原因分析(RCA)とは?手順や手法を具体例で解説
食品製造の現場でトラブルが発生した際、その場しのぎの対応で終わっていませんか?「根本原因分析(RCA)」は、表面的な問題解決に留まらず、トラブルの真の要因を突き止め、再発を確実に防ぐための手法です。HACCPやFSMAなどの国際基準でも重視されており、食品安全を守る上で重要な知識でもあります。
本記事では、RCAの基礎知識から、「なぜなぜ分析」や「特性要因図」などの具体的なフレームワーク、現場で実践するための5つのステップを詳しく解説します。
目次
根本原因分析(RCA)とは?
根本原因分析は、発生した問題の背後にある最も根源的な要因を突き止めるプロセスです。英語の「Root Cause Analysis」の頭文字を取って「RCA」と呼ばれています。
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対策のレベル |
特徴 |
食品製造における対応の例 |
|---|---|---|
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応急処置 |
その場で問題を一時的に解決する |
異物が混入した製品を廃棄する |
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対症療法 |
表面的な原因だけを取り除く |
作業員に注意喚起の通達を行う |
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根本原因分析 |
真の要因を特定し仕組みを改善する |
異物が混入しない密閉型の設備に交換する |
問題の真の要因を特定して再発を防止する
根本原因分析の目的は、目に見えるトラブルの裏側に潜む真の要因を正確に特定することです。機械の停止という事象に対して、単に再起動するだけでは解決とは言えないでしょう。部品の摩耗やメンテナンス手順の不備など、本当の原因にたどり着く必要があるのです。真の要因を改善することで、同じパターンのトラブルを未然に防げます。
表面的な対症療法を排除して本質を改善する
問題が起きた際にその場しのぎの対応をしてしまうと、後からより大きなトラブルを引き起こす危険性が高まってしまいます。根本原因分析の実施で、表面的な対症療法を排除する手助けになります。現場でのトラブル対応が応急処置に留まっていないかを確認する指標にもなるでしょう。長期的には、企業全体の品質管理能力を引き上げる効果も期待できます。
なぜ食品製造で根本原因分析が必要なのか?
食品製造において根本原因分析が強く求められる背景には、消費者保護と国際的な安全基準の要請があります。ここでは、なぜ根本原因分析が必要とされているのかを解説します。
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関連する規格や法律 |
根本原因分析との関わり |
|---|---|
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HACCP |
重要管理点(CCP)の逸脱時に原因特定と是正措置が求められる |
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SQF/FSSC22000 |
不適合が発生した際、真の原因を特定するプロセスが監査対象になる |
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FSMA(米国食品安全強化法) |
予防的管理措置の検証活動として根本原因の究明が推奨されている |
深刻な事故の再発を確実に防止するため
食品のトラブルは、多くの場合消費者の健康に直結するため、深刻な健康被害や大規模な製品回収に発展する恐れがあります。根本原因分析を取り入れることで、アレルゲン混入や食中毒菌の汚染といった重大な事故の再発を確実におさえられます。失敗を組織全体の学びに変えるためにも、根本原因の究明は欠かさないようにしましょう。
HACCPや外部監査を円滑にクリアするため
国際的な食品安全規格であるHACCPやGFSI承認規格において、是正措置としての根本原因分析は必須の要件です。米国食品医薬品局(FDA)が定める食品安全強化法(FSMA)でも、問題の再発を防ぐために根本原因を特定することが重要だと明記されています。独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)の資料にも「根本原因を知ることは問題が再発する可能性を減じる上でカギとなる」と記載されています。客観的なデータに基づいた分析結果を示すことで、厳しい監査にも自信を持って対応できるようになるでしょう。
食品製造現場で根本原因分析を実施しても、結果を認証規格の要求事項へ適切に落とし込むには、専門的な知見が求められます。SAIグローバルジャパンは、ISO22000やFSSC22000、CODEX HACCP、BRC食品安全など食品業界に特化した認証審査に豊富な実績を持つ審査登録機関です。是正措置の実効性を対外的に証明したい食品メーカーのご支援も承っております。
根本原因分析で役立つ手法
真の原因を見つけるためには、直感に頼るのではなく、確立されたフレームワークの活用が効果的です。ここでは、根本原因分析のための代表的な三つの手法を紹介します。
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分析手法の名称 |
主な目的 |
活用が適している場面 |
|---|---|---|
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なぜなぜ分析 |
因果関係を深掘りする |
単一の事象に対する直接的な原因を探る場面 |
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特性要因図 |
全体像を構造化する |
複数の要因が絡む複雑な問題を整理する場面 |
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パレート図 |
優先順位を決定する |
過去のデータから改善すべき重点項目を絞り込む場面 |
参考:HACCP Principles & Application Guidelines | FDA
参考:米国食品安全強化法 「ヒト向け食品に関する現行適正製造 規範ならびに危害分析およびリスクに 応じた予防管理」規則にかかる 食品安全計画雛形
なぜなぜ分析で原因を深掘りして本質を掴む
なぜなぜ分析は、一つの問題に対して「なぜ」という問いを繰り返し、因果関係を深掘りしていく手法です。一般的に五回ほど問いを繰り返すことで、個人のミスではなく仕組みの不備にたどり着くと言われています。たとえば、機械が止まった理由を問うことで、最終的に潤滑油の交換計画がなかったという根本原因を見つけられるような過程が該当します。手軽に始められるため、現場の小集団活動でも活用しやすい手法です。
特性要因図で要因を整理して全体像を俯瞰する
特性要因図は、魚の骨のような形をしていることからフィッシュボーン図とも呼ばれ、問題に関連する要因を網羅的に整理する手法です。人、機械、材料、方法などのカテゴリーに分けて要因を書き出すことで、見落としを防げるとされます。複数の要因が複雑に絡み合っている場合でも、全体像を可視化できるのが大きな利点です。関係者が集まってブレインストーミングを行う際にも非常に役立つでしょう。
パレート図で重要項目を絞り優先順位をつける
パレート図は、発生した不適合や欠陥のデータを分類し、件数の多い順に並べた棒グラフと累積比率の折れ線グラフを組み合わせた手法です。どの問題から優先して対処すべきかを視覚的に判断できるとされています。食品製造の現場において、影響度の高い課題にリソースを集中させる際に重宝するでしょう。
根本原因分析を進める具体的な手順
根本原因分析は体系的なプロセスに沿って実行することが成功の鍵です。ここでは、根本原因分析を進める具体的な五つの手順を解説します。
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分析の手順 |
実施する内容 |
実務でのポイント |
|---|---|---|
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1.事象の定義 |
問題を具体的かつ明確に記述する |
推測を交えず事実のみを記載する |
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2.データの収集 |
関連する記録や現物を確保する |
時間が経過する前に現場を保全する |
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3.要因の特定 |
分析手法を用いて論理的に探る |
チームで議論し客観性を担保する |
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4.是正措置の立案 |
仕組みの改善案を具体化する |
実行可能な計画に落とし込む |
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5.有効性の検証 |
一定期間後に再発がないか確認する |
監査基準に沿って記録を残す |
ステップ1:発生した事象を正確に定義して整理する
分析の第一歩は、発生した問題を誰が見ても同じように理解できるよう、正確に定義することです。いつ、どこで、どの製品で、どのような事象が起きたのかを具体的に言語化しましょう。ここが曖昧だと、その後の調査の方向性が大きくずれてし舞う可能性があります。関係者全員で問題の共通認識を持つことが出発点です。
ステップ2:現場から客観的なデータを収集する
次に、定義した問題に関連する事実やデータを現場から収集します。監視カメラの映像や、作業記録、検査結果など、客観的な情報を集めましょう。個人の記憶や推測に頼ると、誤った結論に導かれる危険性があります。できるだけ早く現場に足を運び、現物を確認することが情報の精度を高めるコツです。
ステップ3:分析を重ねて問題の真の要因を特定する
収集したデータをもとに、先ほど紹介した手法を活用して真の要因を特定します。事象と原因の間に論理的な飛躍がないかを確認しながら、慎重に分析を進めましょう。作業員が不注意だったという結論に達した場合は、さらに「なぜ不注意が起きたのか」を問う必要があります。論理の整合性をチームで検証することが大切なのです。
ステップ4:再発を防ぐための具体的な是正措置を練る
真の要因が明らかになったら、取り除くための具体的な是正措置を立案します。仕組みや設備を改善し、人がミスをしても問題が起きないシステムを構築することが理想です。是正措置は、誰が、いつまでに、何を実行するのかを明確に定めましょう。実行不可能な計画を立ててしまわないよう、予算や期間も考慮する必要があります。
ステップ5:実施した対策の有効性を正しく検証する
是正措置を実行した後は、対策が本当に効果を発揮しているかを検証しなければなりません。一定期間後に再評価を行い、同じ問題が再発していないかを確認しましょう。もし再発している場合は、根本原因の特定が間違っていたか、対策が不十分だった可能性があると考えられます。継続的に検証を行うことで、食品安全システム全体が強化されるでしょう。
根本原因分析を継続的に実践することは、食品安全規格の審査・監査をスムーズに通過するうえでも重要な取り組みです。SAIグローバルジャパンでは、ISO22000やFSSC22000、CODEX HACCPなど食品安全に関わる認証規格の審査登録サービスを提供しています。豊富な審査実績に基づく丁寧なサポートで、貴社の食品安全体制の強化をお手伝いいたします。
根本原因分析で失敗しないための注意点
分析の進め方を間違えると、現場のモチベーションを下げてしまう恐れがあります。ここでは、失敗を避けるために意識すべき注意点を解説します。
ポイント1:個人のミスに留めず背景の原因を追求する
最もよくある失敗は、問題を個人の責任にして分析を終えてしまうことです。担当者の確認不足を結論にしてしまうと、別の担当者が同じミスを繰り返す可能性が残ります。人間はミスをする生き物であるという前提に立ち、システムやプロセスのどこに欠陥があったのかを見つける姿勢が求められるのです。
ポイント2:仕組みの欠陥を特定して本質的な改善を図る
現場の作業員を責めるのではなく、協力して改善策を考える体制を作ることが重要です。現場の生の声には、真の原因につながる貴重なヒントが隠されています。心理的安全性のある職場環境を整え、失敗を報告しやすい文化を醸成することが、根本原因分析を成功に導きます。現場へのリスペクトを忘れないように心がけましょう。
根本原因分析の改善事例
実際の食品現場で根本原因分析がどのように役立っているのか、具体的な事例を紹介します。台湾の台北市立連合病院松徳院区において、給食の野菜に紙のラベルが混入する事例が発生しました。この事例では、根本原因分析を用いて、納入業者、食材、作業員、時間、作業手順という多角的な視点から要因を分析しました。結果、納品時間の集中による現場のプレッシャーや、事前のチェック体制の甘さが真の原因であることが判明しました。これを受け、野菜の納品時間を前倒しし、検収プロセスを見直す是正措置を実施しました。その後の半年間は同様の異物混入事故が完全にゼロになり、現場の満足度も大幅に向上したと結論付けています。複数の要因を整理して仕組みを変えることが、確実な再発防止に寄与するでしょう。
まとめ
この記事の要点として、食品安全を守るための根本原因分析の重要性や進め方を振り返ります。
- 根本原因分析は表面的な対症療法を防ぎ真の要因を特定するために必要
- なぜなぜ分析や特性要因図を活用し客観的な事実に基づいて分析を進めるのがおすすめ
- トラブルを個人のミスで終わらせず誰もが間違えない仕組みへと改善すること
- 事象の定義から有効性の検証までの一連の手順を正しく踏むこと
食品製造現場における品質向上は、地道な問題解決の積み重ねによって実現されますので、今日学んだフレームワークを実務に取り入れましょう。
食品製造現場での根本原因分析の実施や是正措置の整備は、ISO22000・FSSC22000・HACCPなどの認証取得にも直結する重要な取り組みです。「何から始めればよいかわからない」「認証審査に向けて体制を整えたい」とお考えの方は、SAIグローバルジャパンへお気軽にご相談ください。電話・メールフォームにて24時間受け付けております。


